3秒で心電図を読む本 山下武志
心電図の勉強目的なら…
リズム
電気軸
P波
PQ時間
QRS波
ST
T波
総合的に判断
が定番の見方
しかし、実臨床でここまで細かく見ていく余裕はないことが多いという現実
いわゆる正常心電図とは…
1)洞調律:I, II, aVF で P 波が常に陽性 2)心拍数 60-100/ 分
3)P:幅 3 mm 未満、高さ 2.5 mm 未満 4)PR(PQ)間隔:3-5 mm
5)QRS 幅:3 mm 未満
6)QT 間隔:QTc=QT/√R-R が 0.36-0.44 秒
7)平均電気軸 0±90°
8)異常 Q なし(Q 幅<1 mm、Q 深さ<R の 1/4)
9) R 波の電位:I, II, III, aVF の R<20 mm、aVL の R<12 mm、V5,
V6 の R<26 mm
SV1+RV5 or RV6<40 mm、RV1<7 mm
10)V1:R/S<1
11)T 波の高さ<12 mm、その誘導の R の 1/10 以上
12)陰性 T が見られても良い誘導:III, aVL, aVF, V1, 2(V3 女性) I, II は常に陽性
13)肢誘導で≧1 mm、胸部誘導で≧2 mm の ST 上昇なし
14)U 波の高さ<2 mm、陽性
などが定番
ここからが本番
- 心電図読みは3STEP!
患者の血行動態を類推
患者のポンプ機能を類推
患者の症状の原因を類推
- 心電図を読む際は、視線と視点を意識する
- まず
第II誘導を左から右に見る
→心拍の情報、血行動態の把握
→P、QRS、T波がはっきり同定でき、かつ、P波が上向で、心拍数が50-100で規則的ならば正常洞調律
異常なら
→不整脈と考える心拍1つ選び、そのQRS幅を計測し、3㎜未満なら心房、以上なら心室性
→期外収縮:1拍だけ
頻拍:3拍以上持続し、その異常な発火頻度が100-250拍
粗動:発火頻度が250-350拍
細動:発火頻度が350-or数えられないもの
(心房性ならP波、心室性ならQRS波を数える)
(5㎜ごと→300拍
10㎜ごと→150拍
15㎜ごと→100拍
は暗記しとくと楽)
徐脈性なら
→最も長いRR間隔に注目し、そこにP波あるか見る
→なければ洞機能不全症候群、規則的なP波あれば房室ブロック
→ウェンケバッハ、モービッツII型、高度、完全
- 次に
QRS波を縦に見る
→ポンプ機能の把握、興奮収縮連関
→異常Q波は定義めんどくさく使いにくい
→まず肢誘導で第I、II誘導のQ波に注目、正常ならQ波の幅は1㎜未満
→次に胸部誘導でV1-V5にかけてR波が徐々に高くなり、V6で少し小さくなるのが正常
(V1ーV6は少しずつ場所違うだけでそんなに大きな変化はしないはず)
→V5のR波の高さが25㎜以内なら正常
→第I誘導の幅が1㎜以上ならそのままaVL誘導のQ波見る(側壁梗塞)
→第II誘導で1㎜以上ならそのまⅢ、aVF誘導のQ波見る(下壁梗塞)
→V5のR波の高さが26㎜以上なら、V5誘導のST部分が低下していたり、T波が下向きになっていないか見る
→このSTEPで異常でたら心臓超音波へ
- 最後に
上の2つのSTEPを経てやっとST、T波を見る
→急性冠症候群を見逃さない
→STの上昇と低下があれば上昇を優先してみる
→急性冠症候群を疑う症状があれば、どの誘導のどんな小さなST,T波の異常でも陽性所見となりうる
(ちなみにaVR誘導の方向には心室筋はないが、ここでSTが上昇していたら心臓の内膜が相当な虚血状態ということ)
→ST、T波のみにこだわりすぎると見逃すのであくまでも総合的に
→急性冠症候群以外でST上昇するのは、急性心膜炎、心筋炎くらい
- 心電図は心臓の後ろ側に関してはガラ空き
- 無症状で心電図上、ST上昇がある場合、急性冠症候群の確率は極めて低い
- 急性冠症候群と誤診するのは恥ではない!
- 急性冠症候群を見逃すのが恥!
まとめ
第II誘導を左から右に見る
QRS波を縦に見る
ST、T波を見る
これを3秒で処理するということ